就活生に大人気のIT企業。中でも、安定志向の学生にはSIerが人気ですよね。給料がよくて福利厚生もいいですしね。
就職先として見た場合、勝ち組と思えるSIerですが、キャリアパスという意味ではかなり画一的でして、場合によっては「こんなはずじゃなかった…」と落胆してしまう人もいます。
ズバリ、SIerのキャリアパスってほとんどがゼネラリストなんですよね。ゼネラリストでありつつ、役割としてはプロジェクトマネージャというパターンがめちゃくちゃ多いです。
逆にスペシャリスト、例えばアプリケーション(プログラミング)やインフラ(データベース、サーバ等)のスペシャリストっているにはいるのですが、ごく少数です。インフラ系のスペシャリストはまだしも、「バリバリコード書けます」みたいなプログラミングスキルを持った人はかなり少ないです。
本記事では、大手SIerに12年勤務している僕が、なぜゼネラリストにしかなれないのかを解説します。
SIerへの就職を考えている人、SIerに就職してみたものの「今後、どういう感じでキャリアアップしていくのかな…?」と不安な方はぜひ参考にしてみてください。
目次
SIerでのキャリアパスはスペシャリストではなくゼネラリストです
上記のとおり、SIerではスペシャリストではなく、ゼネラリストになる人がほとんどです。理由は以下のとおりです。
- 理由1:どんなプロジェクトでも参画できる人材が求められるから
- 理由2:スペシャリスト領域は協力会社に丸投げするから
- 理由3:最終的にプロジェクトマネージャになることを求められるから
順番に解説していきます。
理由1:どんなプロジェクトでも参画できる人材が求められるから
SIerは受託開発を生業にしていますので、日々、システム開発案件の受注を狙って営業活動をしています。
めでたくシステム開発案件が受注できたら、今度はシステム開発に着手するわけですが、実際に案件が受注できるかどうかはわからないので、基本的には案件が受注できてから開発要員をかき集めます。
で、開発要員はどうやってかき集めるかと言いますと、基本的には「そのとき空いている要員」です。
要員からすると「いつどんなプロジェクトにアサインされるかわからない」ということですよね。つまり、会社から期待されているのは「どんなプロジェクトにもフィットする要員」ということになります。
もちろん、懇ろのクライアント、つまり毎年一定以上の受注が見込めるクライアントについては、常に一定以上のエンジニアを確保しておいて、いつでも開発できるように準備しておくこともあります。こういうポジションのエンジニアからすると、特定のクライアントに張り付くことになるので、「特定の業界や業務に特化したスペシャリスト」っぽい役割になりますが、いざそのクライアントからの受注が途絶えた場合は、速攻で別クライアントのプロジェクトにアサインされることになりますので、結局、求められるのはゼネラリストです。
理由2:スペシャリスト領域は協力会社に丸投げするから
SIerでは、システム開発案件を受注すると、要件定義~外部設計ぐらいまでのいわゆる上流工程は自社でやりつつ、内部設計~コーディング~単体テスト~結合テストまでのいわゆる下流工程は協力会社に委託することがほとんどです。
なぜかと言いますと、色々理由はあるのですが、
- 多数の開発案件をさばくために、一部のタスクを外出し(外部委託)したいから
- 必要な数のエンジニアをアサインできないリスクがあるから(下流工程はかなりの工数が掛かる)
などです。
もちろん、上流工程でもアプリケーションやらデータベースやらネットワークやらの専門知識が必要なのですが、最も専門知識が必要なのは内部設計~結合テストあたりの下流工程なんですよね。
SIerでは、そこの工程をまるっと協力会社に外部委託しています。つまり、専門知識が必要なのは子会社を含めた協力会社であり、専門知識が身につくのも協力会社です。
まれに、データベースやネットワーク等のインフラについては、SIerのエンジニアが設計・構築まで担当しているのを見かけますが、アプリケーションについては、SIerのエンジニアがプログラマーとしてガリガリコードを書いているという案件はほとんど見たことがないですね。
理由3:最終的にプロジェクトマネージャになることを求められるから
SIerでは、要件定義や外部設計などの上流工程をこなせるようになったら、次はプロジェクトを引っ張っていくプロジェクトリーダーの役割を任され、最終的にはプロジェクトマネージャーとしてプロジェクトマネージメントに従事することを期待されます。
理由としては、「外部リソースをうまく使いつつ、少ない人数でより多くの開発案件をこなしたいから」です。
小さい案件なんかだと、まれに、SIer側はプロジェクトマネージャーが1人で、エンジニアは全員協力会社の人という案件もあるぐらいです。これだと、SIer側は1人だけ要員をアサインすればいいので、要員観点ではめっちゃ効率がいいわけです。
結局、SIerとしては、プロジェクトマネージメントができる人を増やしたいわけなんですよね。
スペシャリストのキャリアパスもありますが運の要素が強いです
上述のとおり、エンジニア時代は色んな開発案件に色んなポジションで参画しつつ、最終的にはプロジェクトマネージャーになる人が多く、つまりは、「ゼネラリストかつプロジェクトマネージャー」という人が圧倒的に多いわけですが、中にはスペシャリストとしての道を歩む人もいます。最終的にはある程度マネージメントもさせられるものの、エンジニア時代はがっつりアプリケーションエンジニアやインフラエンジニアとして鍛えられるので、十分スペシャリストと言えるでしょう。
ただ、SIerでスペシャリストになるのはかなりの狭き門で、おおよそ以下のパターンのどちらかです。
- パターン1:技術部隊に配属され、スペシャリストとして育成される
- パターン2:若手時代にグループ会社に出向し、スペシャリストとして育成される
それでは順番に説明していきます。
パターン1:技術部隊に配属され、スペシャリストとして育成される
SIer、特に大手SIerでは、クライアントからのシステム開発案件を受注して売上をあげる部署ばかりが存在しているわけではありません。特定の技術をひたすら深掘りして、それをシステム開発案件で簡易に使えるようにカスタマイズしたり設定ファイルのテンプレートを作ったり、はたまた最新の技術を触ってみて実際の開発案件に使えるのかどうかを検証したり等、いわば研究開発に近いことをやる部隊も存在します。
新人時代に、こういった研究開発の部署に運良く配属されると、はからずもそのままスペシャリストの道を歩むことになります。こういった部署では、往々にして自分で手を動かすことが多いため、実装経験も身につきます。
ただ、こういった部隊は圧倒的に人数が限られているため、こういった部署に潜り込めるかどうかは運の要素がかなり強いです。
パターン2:若手時代にグループ会社に出向し、スペシャリストとして育成される
こちらも大手SIerに多いのですが、若手~中堅ぐらいになると、育成の意味合いも込めて子会社に出向させられることがあります。
子会社では本社からのシステム開発案件の一部を再委託されている場合が多く、該当の行程としては内部設計~結合テストあたりの下流工程です。
つまり、子会社に出向すると、内部設計~結合テストを必然的に対応させられます。若手の人だとゴリゴリプログラミングをやらされるパターンが多いですね。
で、数年間、子会社で内部設計~結合テストの対応を行った後、本社に復帰するわけですが、復帰してからは言うとプロジェクトマネージャーの道を歩む人がほとんどなのですが、まれに出向時に獲得したプログラミングスキルを生かして、そのままスペシャリストの道を歩む人もいます。
上述の研究開発の部署に異動してその道を歩むというよりかは、システム開発案件の対応をする事業部門に属したまま、スペシャリストの道を歩むというパターンが多いですね。当たり前ですが、事業部門はスペシャリスト人材が圧倒的に少ないので、スペシャリストの人はめちゃくちゃ重宝されます。
結局、出向するかどうか、そこで実装スキルを身につけられるかどうか、出向復帰後にスペシャリストの道を進めるかどうかというのが非常に重要で、それぞれかなり運の要素が強いのです。特に出向復帰後に引き続きスペシャリストの道を進めるかどうかは、上司や案件の都合に大きく左右されるため、想像を絶するほどに運ゲーです。
スペシャリストになりたければWeb系企業に転職しましょう
というわけで、SIerでスペシャリストの道を歩むのは狭き門だということを説明してきました。
もしあなたがこれから就職活動をする学生で、スペシャリストになりたい場合は、おとなしくWeb系企業に就職するのがいいです。その方が圧倒的にスペシャリストになれる確率が高いです。
もしすでにSIerに入社してしまっていて「スペシャリストになりたかった…!」という人は、早めに転職するのが吉です。
理由は以下のとおりです。
- SIerではスペシャリストになる道が限られており、かなりの運ゲーであること
- スペシャリストとしての経験が乏しい中、Web系企業等に転職するのは年齢を重ねれば重ねるほどどんどん難しくなるから
実装未経験のいい年したおっさんが「先生、プログラミングがやりたいです…」とか言って、Web系企業に転職しようとしても、転職できなさそうですよね?Web系企業からすると、未経験ならせめて若くてポテンシャルのある人を採用したいですよね?
「完全にやってしもうた…転職しかないのか…!」とショックを受けているそこのあなた。
今からでも遅くありません。前向きに転職活動をはじめましょう。今すぐはじめましょう。むしろ「チャンス!」ぐらいの意気込みで取りかかりましょう。
そうと決まれば、まずは転職エージェントに登録しましょう。転職活動は転職エージェントに登録してからがスタートです。
転職エージェントはいわば転職のプロです。転職エージェントを使う・使わないでは、あなたの転職の成功確率が大幅に違ってきます。なぜかと言いますと、エージェントはあなたの経歴やスキルに沿った求人を提案してくれるからです。自分で求人を探すより圧倒的に楽ですし、何より成功確率の高い求人を紹介してくれますので、メリットしかありません。
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以上です。
もちろん、拙速に転職せず、SIerでスペシャリストの道を模索するのも一つの手です。ただ、やはりスペシャリストを目指すには、Web系企業に入ってゴリゴリスキルを磨くのが一番確率が高いですし、効率的かなと思います!