就活生に人気の就職先として人気のSIer(エスアイアー)。
SIerとは、クライアントである企業からシステム開発案件を受託して、システムを開発し、納品することを生業としている企業のことです。
大手で言うと、NTTデータや野村総合研究所(NRI)あたりですね。
特に大手のSIerは、比較的給料が高くて、福利厚生が充実しているので、就活生に人気なのかなと思っています。
ただ、SIerといえば「激務でブラック」で有名ですよね。
本記事では、某大手SIerに12年勤務していた僕が、SIerの実情について解説したいと思います。
「SIerに就職しようと思っているけど、ぶっちゃけSIerってどうなの?」という就活生の疑問にお答えします。
目次
SIerが激務でブラックな理由は?
まずは、なぜSIerが激務でブラックなのかを解説します。
理由は以下のとおりです。
- 理由1:残業前提でプロジェクト計画が組まれるから
- 理由2:「お客様は神様」という文化が根強いから
- 理由3:「残業は美徳」という文化が根強いから
それでは順番に説明していきます。
理由1:残業前提でプロジェクト計画が組まれるから
システム開発をする前に、どんな感じのスケジュール感で進めるかとか、どれぐらいの原価を目標に開発するかなど、システム開発をする上での計画を立てるのですが、その時点ですでに残業する前提なんですよね。
たとえば原価です。原価とはエンジニアの人件費とかですね。
毎月の出勤日って、20日間とかじゃないですか。で、定時って7.5時間勤務ぐらいなので、毎日定時で帰るとすると、1ヶ月の稼働時間って
20(日)×7.5(時間)=150(時間)
ですよね。
でも、原価目標を考えるとき、たいていのプロジェクトって180時間とかで計算するんですよね。
つまり、毎月30時間の残業をする前提です。
もちろん、赤字にならないように多少多めに原価を見ておくという意味合いが強いんですけどね。
もう1つの例としては、スケジュールです。
「設計工程にはこれぐらいの稼働が掛かりそうだなぁ」みたいな感じで、工数を積み上げつつ、納期に間に合うような開発スケジュールを考えるのですが、このときの工数が残業前提なんですよね。
つまり、毎月30時間ぐらい残業する前提でスケジュールが組まれるので、必然的に残業しないと納期に間に合わないんですよ。
しかも、たいていスケジュールどおりには開発が進まないので、さらなる残業が必要になります。
原価は「赤字にならないように」という意味合いが強いですが、スケジュールについては完全に違います。ヒドい。
理由2:「お客様は神様」という文化が根強いから
SIerのビジネスの根幹は「クライアント企業(お客様)からの受託開発」なので、お客様からシステム開発案件をもらえないと、食いっぱぐれてしまいます。
つまり「お客様は神様」なわけです。
それゆえ、SIerでは「お客様は神様」「お客様の言うことは絶対」みたいな文化が根強く残っています。
お客様のことを大切に思う気持ちはめちゃくちゃ重要なので、それを否定するつもりは毛頭ないのですが、これを変に勘違いしている人が多いという印象です。
特に営業担当に多いかなと思います。たとえば、こんな感じです。
- 契約外の作業を「お客様が言ってるから」という理由だけでホイホイ受けてきてしまう
- クライアントからの過度な値引き要求に対して「お客様が言ってるんだから何とかしろ!!」と何の考えもなく開発担当に丸投げする
- クライアントからの過度なスケジュール短縮要求に対して「お客様が言ってるんだから何とかしろ!!」と何の考えもなく開発担当に丸投げする
「こんな人、ホントにいるのかよwww」と思うかもしれませんが、すべて実話です。しかも結構なあるあるです。
個人的には、お客様は王様ではないので、不当なことを言ってくるとか、法外なことを要求してくるのであれば、突っぱねるべきだと思うんですけどね。
とは言え、受託開発が取れないと、そのぶん、売り上げが減るので、会社としては何とか案件を受注すべく、「お客様に寄り添うべきだ!!」みたいな感じなんですよね。
理由3:「残業は美徳」という文化が根強いから
上記のような文化が根強く残っているがゆえに、どうしても残業が常態化しているわけですが、SIerでは「残業=美徳」という文化も根強く残っています。
たとえば、僕が夜の21時ぐらいまで会社に残っていると、

上司
おっ、頑張ってるなぁ~
と上司に声を掛けられるわけです。
一見、普通の声掛けに思えるかもしれませんが、この上司は21時まで残業していることを「頑張っている」、つまり「いいことだ」と評価しているわけです。
全然普通じゃないですよね。
そもそも、21時に上司が会社にいる時点で結構ヤバいです。上司こそ率先して早く帰れよって感じですね。
僕は「できることなら毎日定時に帰りたい派」なので、隙あらば定時で帰っていたわけですが、実は一般社員の中には「できることなら残業したい派」が数多く存在します。
理由は「残業代を稼ぎたいから」です。
僕が勤務していたSIerは基本給が安く、残業代がないと年収が激下がりするという事情があったりします。
よって、上司(管理職)も一般社員も、残業に対して肯定的な人が多いというわけです。
実際、どれぐらい激務でブラックなのか?
以上、SIerが激務でブラックになりがちな理由を解説しましたが、「じゃあ、お前は実際にどれぐらいの残業時間だったのよ?」って気になりますよね。
僕の場合、ここ1,2年の平均残業時間は45時間ぐらいでした。昔に比べるとかなり少なくはなりましたが…。
最近では、いろんな事件があったりして、残業時間がかなり厳しく管理されるようになり、あまりに過度な残業を繰り返していると、人事部門から(管理職が)厳しく指摘されるようになりました。
とは言え、上記のような文化はすぐには変わらないですし、残業が規制されたからといって、そのぶん仕事が減っているわけではないので、根本的な解決にはなっていないというのが現状です。
残業時間を厳しく管理された上での45時間なわけですが、そもそも、毎月の残業が45時間って結構多くないですか?
週に1回、定時退社するとして、残りの16日間で残業をするとなると、1日あたりの残業時間は
45(時間)÷16(日)≒3時間
です。
18時が定時なら、1週間のスケジュールとしては
- 月曜日:21時退社
- 火曜日:21時退社
- 水曜日:18時退社
- 木曜日:21時退社
- 金曜日:21時退社
みたいな感じです。
結構忙しくないですか?
激務かどうかは、アサインされるプロジェクトに依存します
会社全体で見ると、僕は「ちょっとだけ忙しい人」という部類に入るのですが、残業時間が規制されているとはいえ、僕より残業している人はごまんといます。
「お前より残業してる人ってどんな部署の人なのよ?」と気になると思いますが、実は部署はそれほど関係なく、「参画しているプロジェクトが超大変な人」です。
概ね、以下に該当するプロジェクトがそれです。
- 初取引のクライアント企業のプロジェクト
- プロジェクト計画が甘すぎて炎上しているプロジェクト
前者はクライアント企業とのリレーションが構築できていなかったり、どういった性質をもったお客様なのかがわかっておらず、問題プロジェクトになることが多いです。後者は想像に難くないと思うので説明は割愛します。
実は、残業時間は部署にはあまり依存しないと言いつつ、大手SIerはクライアント企業ごとに組織が構成されていることと、炎上しがちなプロジェクトはたいてい特定のクライアント企業のものだったりするので、部署も関係あると言えばあるんですけどね。
基本的にプロジェクトは自分では選べないので、激務かどうかは完全にガチャです
「暇なプロジェクトがええんやけど、選べたりすんの…?」と気になると思うのですが、正直、自分がどのプロジェクトにアサインされるかは、各プロジェクトの状況だったり、人事部門や上司の意向に依存するので、基本的には自分では選べません。
つまり完全にガチャなんですよね。
ちなみに、ガチャに失敗して、めちゃんこ忙しいプロジェクトにアサインされた場合、「異動したい!!」と言えば異動することもできるでしょうが、異動先がさらに激務なプロジェクトの可能性もあるわけで…。
なので、「毎日定時で帰りたい」とか「一瞬でも激務になってしまうのはイヤだ!」みたいな人には、SIerは厳しいかもです。
一方、「それなりに給料もらえるし、残業45時間ぐらいだったら耐えられそうだし、割り切って働くのもアリだな」みたいな人にはうってつけかもです。
以上です。
就職先選びは慎重に!