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【体験談】元SIerエンジニアがSIerで得られるスキルを解説します

就活生に人気のIT業界。

中でも大手のSIer(エスアイアー)は比較的給料が高くて福利厚生も整っているので、結構人気があります。

みん就のランキングを見ると、大手SIerであるNTTデータが第3位にランクインしています。すごい…!

とは言え、SIerは仕事内容が想像しづらいので、就活生からすると以下のような不安があるかと思います。

「SIerって”システムを開発する会社”って聞いたけど、具体的にどういう経験を積めるの?」

「将来的に転職したいと思ってるんだけど、ぶっちゃけSIerって市場価値の高いスキルは身につくの?」

本記事では、某大手SIerに約12年勤務していた僕が、SIerで身につくスキルについて解説します。

SIerで身につくスキルは?

ズバリ、SIerで身につくスキルは以下のとおりです。

  • その1:クライアントから要件をヒアリングするスキル
  • その2:要件を実現するためのシステム仕様を考えるスキル
  • その3:「落としどころ」を的確に捉えるスキル
  • その4:キーパーソンを一瞬で見抜くスキル
  • その5:謝罪文書を素早く作成するスキル

最初の方は「あーなるほどね」という感じだと思いますが、最後の方になってくると「謝罪文書を素早く作るスキルってなんやねん」みたいになってくると思いますので、それぞれ順番に説明していきます。

その1:クライアントから要件をヒアリングするスキル

SIerの仕事はざっくり言うと「クライアントから要件をヒアリングし、要件を満たすようなシステムを作って納品する仕事」です。

なので、システム開発で最初にやるのは、クライアントから要件をヒアリングしまくることです。

そもそもクライアントから要件をしっかりヒアリングすることができないと、まともなシステムを作れないので、必然的に要件を漏れなく引き出すスキルが身につきます。

また、クライアントから漏れなく要件を引き出そうと、やたらめったらヒアリングの時間を設けるとクライアントが嫌な顔をするので、効率的に要件をヒアリングするスキルも身につきます。

これはSIerエンジニアにとってのコアスキルですね。

その2:要件を実現するためのシステム仕様を考えるスキル

クライアントから要件を漏れなく引き出したところで、今度はそれをどうシステムとして実現するかを考えないといけません。

最初はもちろん「要件をどうやってシステム仕様に落とし込むか?」をひたすら考えて実践していくことになるので、システム設計の基本スキルが身についていきます。

基本スキルが身についたあとは「いかに保守運用がしやすいシステム仕様にするか?」という高度なシステム設計スキルを磨いていくことになります。

なぜなら、システムの保守運用を担当するのは、往々にしてそのシステムを開発したベンダになるからです。

さらに、実際にシステム開発に携わった人が担当することが多いので、つまりは自分が保守運用を担当する可能性が高いということです。

「保守運用のこととか一切考えませんでした」というシステムだと、保守運用がめちゃくちゃ大変になるので、結果的に自分の首が絞まります。

なので、「あとから機能を追加しやすいように作っておく」とか「シンプルでわかりやすいシステム仕様にする」など、保守運用の観点をシステム開発時点で混ぜ込んでおくのが非常に重要になります。

こうして、色んな角度からシステム仕様を考えることができるようになっていきます。

その3:「落としどころ」を的確に捉えるスキル

システムエンジニアとして経験を積んでいくと、今度はプロジェクトリーダを任されるようになります。

プロジェクトリーダになると、システムエンジニアの色が薄くなり、プロジェクトマネージャの色合いが濃くなってきます。つまり、プロジェクト管理業務が主たる仕事になってくるわけです。

プロジェクトリーダは自社のエンジニアチームを統率しつつ、クライアントと折衝をしたりするので、どうしてもチームメンバとクライアントとの板挟みになります。

クライアント
クライアント
A機能の仕様、○○な感じに変えてほしいんですけど…
PJリーダ
PJリーダ
はい、わかりました。

 

<自社に戻った後…>

PJリーダ
PJリーダ
A機能、○○な感じに変更してほしいということなんだけど、どうかな?
チームメンバ
チームメンバ
その仕様変更は結構な工数が掛かりますね。だいたい10人日は掛かるので、今のマスタスケジュールで進めるのは無理です。断ってきてください…!
PJリーダ
PJリーダ
えー…。

 

こんな感じです。

プロジェクトリーダはこういった面倒くさい調整をさせられる場合が多く、慣れないうちは「ど、ど、どうしよう…!」と焦りまくるものなのですが、慣れてくると”いい感じ”の調整ができるようになります。

つまり、両者が譲歩できる絶妙な「落としどころ」を瞬時に見抜いて、そこに向かって調整をするんです。

こんな感じですね。

クライアント
クライアント
A機能の仕様、○○な感じに変えてほしいんですけど…
PJリーダ
PJリーダ
(心の声)うーむ、その仕様変更は結構な工数が掛かりそうだな…。最悪、スケジュールにハマらない…。よし…!
PJリーダ
PJリーダ
なるほどですね。ちなみに、△△な感じに変えるという案もあるのですが、こちらでも大丈夫ですか?
クライアント
クライアント
はい、それでも構いません。

 

<自社に戻った後…>

PJリーダ
PJリーダ
A機能、○○な感じへの変更っていけそう?
チームメンバ
チームメンバ
だいたい10人日は掛かるので、今のマスタスケジュールで進めるのは無理ですね…。
PJリーダ
PJリーダ
なるほど。じゃあ、△△な感じへの変更だったらどう?
チームメンバ
チームメンバ
あー、それなら3人日ぐらいでできるので、何とか今のマスタスケジュールで進められそうです。
PJリーダ
PJリーダ
では、△△でお願い!

 

落としどころを狙うのはいわば妥協点に結論を持って行くことなので、やりすぎはあまり良くないのですが、残念ながらSIerではよく見られる光景です。

幸か不幸か、SIerに長く勤めているとこういった落としどころを瞬時に見抜くスキルが磨かれます。

その4:キーパーソンを一瞬で見抜くスキル

上記のとおり、プロジェクトリーダに任命されると、クライアントと折衝する機会がめちゃくちゃ増えます。

折衝の際、クライアント側の体制や権力関係を正しく把握していないと、以下のような残念なことが起こります。

PJリーダ
PJリーダ
先日ご要望のあった仕様変更の影響で、プロジェクト全体のスケジュールを1週間延ばしていただきたいんですが…
クライアントA氏
クライアントA氏
ふむ、仕方ないですね…。

 

<数日後、打ち合わせで…>

PJリーダ
PJリーダ
先日の仕様変更で、プロジェクトスケジュールを1週間延伸させていただきました。で、現在の進捗は…
クライアントB氏
クライアントB氏
え…?1週間伸ばすと、X社の○○システムとの結合が間に合わなくなりますよ?X社との再調整は難しいので、なんとか元のスケジュールで進めてもらえませんか?
クライアントA氏
クライアントA氏
で、ですよねー。すみませんが、そういうことでよろしくお願いします。
PJリーダ
PJリーダ
(心の中で)マジかよ…。こないだ「ええで」って言うてたやんけ…!

このパターンだと、マスタスケジュールの変更について、調整・折衝すべきだったのはA氏じゃなくてB氏でした。

つまり、キーパーソンはB氏だったというわけです。

キーパーソンを誤認していたがゆえに調整先を誤り、結果として調整事項を後になってひっくり返されて我々が痛い目にあうというのはかなりのあるあるです。

なので、SIerで長く仕事をしていると、クライアントの体制や権力図を瞬時に見抜くスキルが自然と身につきます。

僕は某大手SIerに約12年在籍していましたが、1、2回クライアントと打ち合わせをすると、「あー、この人がキーパーソンだな」とか「キーパーソンはXさんだけど、Yさんが2番手のキーパーソンで、Xさんからかなり信頼されているっぽいから、最悪、Yさんと調整すればOKだな」ぐらいまでバッチリわかります。

その5:謝罪文書を素早く作成するスキル

プロジェクトリーダとして経験を積んでいくと、今度はプロジェクト全体の管理を任されるようになります。いわゆるプロジェクトマネージャですね。

プロジェクトマネージャになると、現場の統率はプロジェクトリーダに任せてしまうので、プロジェクトが順調なうちはあまり現場に顔を出さないようになります。

しかし、トラブルが発生して大幅な進捗遅れが発生したり、システムの品質が悪くて想定どおりの性能が出なかったりすると、クライアントから「どないなっとんじゃ!!」とお叱りを受けるわけで、そういったことが発生すると現場に舞い戻り、「クライアントへの謝罪」という重大タスクを任されることになります。

こと日本においては、謝罪に赴く場合は公式な謝罪文書を持参しないと「紙を持ってこい!!」とこれまたお叱りを受けることになるので、Wordあたりでそれっぽい文書を作ることになります。

謝罪文書というのはフォーマットが決まり切っていまして、概ね以下の内容を盛り込む必要があります。

  • 事象(時系列に並べる)
  • 発生原因
  • 再発防止策

問題プロジェクトなんかだと、しょっちゅう謝罪文書を作っては謝罪に行く羽目になるので、「こいつに謝罪文書を書かせたら右に出る者はいない」みたいな謝罪のプロが謎に誕生します。

逆に言うと、謝罪文書はベースの論理的思考能力と原因追及能力があれば、繰り返しの訓練でサラリと書けるようになるため、プロジェクトマネージャクラスになると、謝罪文書を超高速に書くスキルが自然と身につきます。

SIerで得られるスキルはSIerかITコンサルでしか通用しません

ここまで読んでみて、お気づきの方もいらっしゃるかと思います。

そうです。

SIerで得られるスキルはかなり特殊で、十中八九、SIerでしか通用しません。

つまり、汎用的なスキルは身につかないということです。「汎用的=市場価値が高い」と捉えると、SIerにいても市場価値の高いスキルは身につかないということになります。

システム実装のスキルが身につくわけではないので、もちろんITベンチャーでは通用しませんし、システムの受託開発という極めて特殊なクライアントワークのマネジメントスキルなので、他業界で通用するかどうかはかなり微妙です。

おそらく、ギリギリ通用するのはITコンサルぐらいです。

SIerエンジニアまたはプロジェクトマネージャからITコンサルへの転職は、かなりスタンダードなキャリアアッププランなので、将来的にITコンサルへのキャリアアップを目剤しているのであれば問題ありません。

しかし、「とりあえずSIerに入って経験を積んでからITベンチャーに転職したい」とか「将来的にWeb系企業に転職したい」みたいな人は、最初からITベンチャーやWeb系に就職することをおすすめします。

「もうSIerに入っちゃったよ!!!どうしよう…?」という方は、今すぐ転職することをおすすめします。もしあなたが20代ならば、SIerからITベンチャーやWeb系に転職することは十分可能です。

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以上です。

何だか夢のない話になってしまいましたが、こういうのって企業説明会では聞けないですし、OB訪問をしたところで対応してくれるのは「その会社の中でイケてる層の人」なので、これまたこんな話は聞けませんしね…。

みなさんの参考になれば幸いです。

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